ふかしたサツマイモ

 10月21日。

 期待の新入社員の初出勤の日。
 意欲をもって仕事に取り組む彼女を横目に、僕は入社手続きを、あれやこれやとしていた。

 そんな時、母から電話があった。



 複雑な家庭環境で育った私の母にとって、育ての親である祖母は、とても大切な存在だ。これまでも、母は祖母の面倒を見てきたが、2003年からは、祖母の介護をほとんど行うようになった。


 僕が幼い頃。
 祖母は、僕に「ふかしたサツマイモ」を食べさせてくれた。

 昭和50年代前半。笠利の須野集落では、スナック菓子もなかなか手に入らなかったが、祖母のサツマイモは、とても美味しく、僕はパクパクと食べていた。



 母の名を呼ぶ祖母の声。
 忘れたことはない。

 数年前に、米寿のお祝いをした際の、祖母の喜びようはなかった。なんにも出来なかったが、僕たち、孫が集まって、祖母を祝いたいという気持ちが、祖母を喜ばせたのだろう。今でも、あの日は、まぶたに焼き付いている。


 僕が起業して1年が過ぎた。
 忙しさにかまけ、祖母と会ったのは、このお正月が最後だった。
 僕の家内は、昨日、元気な祖母と会ったのが最後だった。




 母から祖母が亡くなったと電話があった。

 急に具合が悪くなり、さきほど亡くなったそうだ。祖母の妹(僕には叔母)と話している最中に、眠るように亡くなったそうだ。人の生き死には、分からないもの。


 長命だった祖母に対して、僕は感謝の気持ちしかない。


 ふかしたサツマイモが、いまは無性に恋しいのだ。
[PR]
by drmaeda2005 | 2009-10-21 16:48
<< 想いは還ってくる 燃え盛る生命 >>