ささやかな慰労の席。
「はじめて大人が真剣に話を聞いてくれた。そのおかげで、若さを気にせず、起業することができた。」そんな感謝の言葉を伝えてくれる若者がいた。嬉しかった。
この先、彼は幾多の試練を経験するだろう。しかし、必ず、この地域で若者に愛される衣料店を切り盛りするようになる。もう、僕には彼がいきいきと活躍する姿が浮かんでいる。
半年ほど前、美しさに影を落としたような、ジレンマを感じている女性がいた。彼女に必要だったのは、ほんのすこしの勇気と、ふたたび自信を取り戻すことだった。このシマで暮らすなかで得た新しい生命によって、彼女は包み込む優しさという力を得たのだ。きっと彼女は、次々と環境を打ち破り、望む環境を得ていくだろう。
長い研修だった。これからはずっと、彼女は上のお子さんにお休みのキスをしてから、ネット販売に取り組める。愛がすべてを変えてくれる。時間の制約を、心の制約にすることなく、のびのびと力を発揮して欲しい。
振り出しに戻った彼女がいる。家族と愛情。葛藤を乗り越えながら、考える枠を広げながら、人生を掴んで欲しい。誰も君を非難はしない。だから、問題を直視し、改善してほしいのだ。
倒産を経験することで、みずからの自信が粉々に砕け、逃げ帰るようにして奄美に戻ってきた男性がいる。しかし、素晴らしい伴侶と出会い、マイナスからスタートした生活を、いまではプラスに変えるところまで転換できた。これからも夫婦仲良く、より良い人生を目指して欲しい。
芯の強い女性がいる。彼女は間違いなく、近い将来、奄美を代表する女性経営者になるだろう。いま、そのための産みの苦しみを経験している。人生とは不思議なもの。心を大きくするための試練は、まるで天命を受けるかのような不安を与えていることだろう。けれども、みずからの力で人生を切り開いてきた自信をもっと感じて欲しい。
「いまに見ていろ」そんな気持ちで、人生を変えようと突っ走ってきた若者がいた。学生の頃がまるでウソのように、彼は献身的で、仕事に打ち込む人間になった。紙に書き出したとおり、人生の転機で、自分の店を持つことができた。もう誰も彼の道を邪魔することはできない。
わずか3年。されど3年。
あっという間だった。
人が大きく変わるのに充分すぎる時を過ごしてきた。僕も変わった。
いま、学生時代、聴いていたレベッカのMoonに耳を傾けている。
「壊してしまうのは一瞬でできるから、大切に生きて」
逆境こそが人を育てるもの。乗り越えるべき試練が大きければ、それだけ人として成長できると信じている。
涙するとき、きっと誰かが手を触れてくれる。
怖くて足がすくんでしまうとき、きっと誰かが背中から励ましてくれる。
呆然としたとき、きっと誰かが気づきを与えてくれる。
僕たちは、まだ旅の途中なのだ。